データ分析系プログラマーのブログ

主にPythonを使ったデータ分析や機械学習をやっています。

プログラミング言語における配列の書き方について

プログラミング言語には基本的な共通の機能があります。例えば、変数、データ型、配列、演算子、if文、繰り返し文、関数、クラスなどがそれにあたります。ですので、これらの共通する機能をそれぞれのプログラミングでかければ、プログラミング言語の違いがあってもさまざまなプログラミング言語に対応していくことができます。この記事ではPyhon、JavaScriptRubyの三つのスクリプト言語でのそれぞれの配列の書き方について紹介しています。なお、このプログラムの実行環境としてはVScodeでターミナル経由から実行できる環境があるものとしています。

配列について

プログラミング言語における配列とは、一列に連なったデータのまとまりのことを言います。例えば、1から5までの5つの整数のデータのまとまりを一つの配列としてデータを保持することができます。この配列を使うことによって、幾つものデータをまとめて配列に保持しておき、それを繰り返し文などを使用することで、その配列に含まれているデータを使った処理をしたりすることができます。

Pythonにおける配列の書き方

Pythonにおいて配列は以下のように記述することができます。まず変数を用意して、そこに角カッコで囲み、データごとにカンマで区切ることで配列データとして変数にデータを保持させることができます。数値の場合はそのままでよく、文字列としての配列を作りたい場合は、シングルクォーテーションもしくは、ダブルクォーテーションで囲むことで文字列を配列にすることができます。

x = [1,2,3,4,5]

print(x)
$ python array01.py
[1, 2, 3, 4, 5]
y = ["a","b","c","d","e"]

print(y)
$ python array02.py
['a', 'b', 'c', 'd', 'e']

JavaScriptにおける配列の書き方

JavaScriptにおいて配列は以下のように記述することができます。基本的な配列の書き方は、Pythonと同じです。Pythonとの違いは、変数を作るときにvarもしくはletでこれから書く文字が変数であることを宣言する必要があります。また、JavaScriptの場合には、コードの終わりにセミコロンをつける必要もあります。出力はPythonではprint関数を使用していましたが、JavaScriptではconsol.log関数というものを使用して出力をすることができます。

var x = [1,2,3,4,5];

console.log(x);
$ node array01.js
[ 1, 2, 3, 4, 5 ]
var y = ["a","b","c","d","e"];

console.log(y);
$ node array02.js
[ 'a', 'b', 'c', 'd', 'e' ]

Rubyにおける配列の書き方

Rubyにおいて配列は以下のように記述することができます。Rubyでの配列の書き方は、Pythonと同じように宣言をする必要はなく変数をそのまま書き、角カッコで囲むことで配列を作ることができます。また、Rubyにおいて、Pythonのprint関数やJavaScriptのconsol.log関数と同じ機能を持つ出力関数はp関数またはputs関数になります。ここではp関数を使って、作った配列の中身を見ています。

x = [1,2,3,4,5]

p x
$ ruby array01.rb
[1, 2, 3, 4, 5]
y = ["a","b","c","d","e"]

p y
$ ruby array02.rb
["a", "b", "c", "d", "e"]

プログラミングにおける変数の書き方について

プログラミング言語には基本的な共通の機能があります。例えば、変数、データ型、配列、演算子、if文、繰り返し文、関数、クラスなどがそれにあたります。ですので、これらの共通する機能をそれぞれのプログラミングでかければ、プログラミング言語の違いがあってもさまざまなプログラミング言語に対応していくことができます。この記事ではPyhon、JavaScriptRubyの三つのスクリプト言語でのそれぞれの変数の書き方について紹介しています。なお、このプログラムの実行環境としてはVScodeでターミナル経由から実行できる環境があるものとしています。

変数について

プログラミング言語における変数とは、ある値を何かの変数に代入して使用することを言います。具体的には、例えばxという変数を作った場合に、そこに数値の1を代入することで、その変数xは1という値を持ったものとして扱うことができます。このため、一旦その変数に値を代入すれば、その変数で同じ値を使うことができるというものです。また、変数というのは途中で代入された値を書き換えることもできます。

Pythonにおける変数の書き方

Pythonにおいて変数は以下のように記述することができます。数値の場合はそのままでよく、文字列として変数に値を代入したい場合は、シングルクォーテーションもしくは、ダブルクォーテーションで囲むことで文字列を変数に代入することができます。また、Pythonの場合、日本語を扱う場合は、コードの最初に、# coding: utf-8という文字コードの指定をしておく必要があります。

# coding: utf-8

x = 1
print(x)

y = "こんにちは"
print(y)
$ python variable.py
1
こんにちは

JavaScriptにおける変数の書き方

JavaScriptにおいて変数は以下のように記述することができます。Pythonとの違いは、変数を作るときにvarもしくはletでこれから書く文字が変数であることを宣言する必要があります。また、JavaScriptの場合には、コードの終わりにセミコロンをつける必要もあります。出力はPythonではprint関数を使用していましたが、JavaScriptではconsol.log関数というものを使用して出力をすることができます。

var x = 1;
console.log(x);

var y = "こんにちは";
console.log(y);
$ node variable.js
1
こんにちは

Rubyにおける変数の書き方

Rubyにおいて変数は以下のように記述することができます。Rubyでの変数の書き方は、Pythonと同じように宣言をする必要はなく変数をそのまま書くことができます。また、Rubyにおいて、Pythonのprint関数やJavaScriptのconsol.log関数と同じ機能を持つ出力関数はputs関数になります。print関数もありますが、この場合は改行がされないまま出力されます。このputs関数の書き方はPythonJavaScriptのような丸括弧は必要ありません。

x = 1
puts x

y = "こんにちは"
puts y
$ ruby variable.rb
1
こんにちは

なぜスピッツはセンチメンタルロックと呼べるようなJ-ROCKにたどり着いたのか?

90年代のJ-ROCKシーンにおいて、スピッツは独自のスタイルを持って新しい音楽ジャンルを開拓してきました。それはスピッツというジャンルと言われるような、これまでのJ-ROCKにはなかったロックのジャンルを確立してきたとも言えます。この記事では、そのスピッツ独自の音楽ジャンルをセンチメンタルロックと呼ぶことにして、スピッツがこのセンチメンタルロックな音楽を作るようになった背景について考察していきます。

90年代初期のロック(J-POP化していくJ-ROCK)

90年代のJ-ROCKを振り返るに当たって、おそらく一番の重要なポイントというのは、それまでのロックというジャンルがどちらかというとインディーズバンドによるライブ活動を中心としたアンダーグランド的なジャンルであったのに対して、90年代以降、ラジオやテレビなどでも聴くような、お茶の間としての音楽ジャンルに変容していったことがあげられます。ここでは、主に5つのロックバンドを例にあげて、彼らがどのようにしてお茶の間に受け入れられるようなロックの音楽性を求めていたのかについて整理しています。

BOØWY(ロック)

90年代のロックバンドに多大な影響を与えた日本のロックバンドとして、BOØWYが挙げられます。BOØWYは、1980年代に活躍したロックバンドで、1981年にバンドが結成され、翌82年に『MORAL』というファーストアルバムを発表してメジャーデビューしました。BOØWYは、ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4ピースバンドで構成されているスタンダードなロックバンドで、シンプルな8ビートと乾いたエッジの効いた王道な縦ノリのロックサウンドが特徴です。1986年に4枚目のシングルとして発表された『B・BLUE』は、そのBOØWYのロックサウンドを象徴するような一曲となっていて、最終公演となった「“LAST GIGS”」では1曲目に演奏されています。1

『B・BLUE』

X JAPANヘヴィメタル

X JAPANは、1989年にXというバンド名でメジャーデビューしたロックバンドです。X JAPANも、ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4ピースバンドですが、曲によってはドラムを担当しているYOSHIKIさんがピアノを演奏する場合もあります。いわゆるビジュアル系バンドの先駆けともなったX JAPANは、派手なメイクや金髪を逆立てた髪型、派手なライブパフォーマンスなどによって、それまでの硬派なイメージだったロックのイメージを塗り替えました。また音楽性としては、1989年に発表されたメジャーシングルの1枚目の曲である『紅』に代表されるヘヴィメタルの要素に高速なドラムを加えたスピードメタル、パワーメタルと呼ばれるサウンドを作る一方で、同じく1989年に発表されたメジャーシングル2枚目の『ENDLESS RAIN』に代表されるピアノを使ったシンフォニックなバラード曲という二面性のある曲作りをしているロックバンドです。

『紅』

『ENDLESS RAIN』

PERSONZ(ロック)

PERSONZは1987年にメジャーデビューした女性ボーカルの4ピースバンドです。女性ボーカリストのJILLさんによるハスキーな歌声とPERSONZの独特なメロディと王道的な乾いたエッジの効いたロックサウンドが特徴的なバンドです。1989年に発表された4枚目のシングルの『DEAR FRIENDS』がTBSドラマの『ママハハ・ブギ』の主題歌であったこともあって、有名になりました。その次の5枚目のシングル曲の『7COLORS -Over The Rainbow-』は、PanasonicヘッドフォンステレオのCMソングに使われるなどして、ロックシーンにおいて女性ボーカルによるオシャレなロックバンドという新たなイメージを確立しました。

『DEAR FRIENDS』

『7COLORS -Over The Rainbow-』

米米CLUB(ファンクロック)

米米CLUBは、1985年にメジャーデビューをして、90年代に活躍したロックバンドです。米米CLUBは、カールスモーキー石井さんと、ジェームス小野田さんの二人のボーカルに、ギター、ベース、ドラムのバンドの形式は持ちつつも、ダンサーチームのSUE CREAM SUEや、インストバンドBIG HORNS BEEなどの数多くのサポートメンバーによって編成される大所帯のバンドです。そういうこともあって、ソウル、ニュー・ロマンティック、ポップ·ロック、ブラス・ロック、ムード歌謡、ファンクなど、様々なジャンルの音楽性を持ったバンドです。1990年には、1987年に発売されたアルバム『KOMEGUNY』の3曲目に収録されていた楽曲である『浪漫飛行』が、JALの沖縄旅行「JAL STORY 夏離宮キャンペーン」のCMイメージソングとして起用され、一躍有名なバンドになりました。その後も1992年には、『君がいるだけで/愛してる』が、フジテレビ系ドラマ『素顔のままで』のテーマソングに起用され、これまでの累計売上が約289.5万枚2となっていて、米米CLUBの最大のヒットソングになりました。

浪漫飛行

『君がいるだけで』

THE BLUE HEARTS(パンクロック)

THE BLUE HEARTSは、1987年にメジャーデビューをして90年代前半まで活動したパンク・ロックバンドです。THE BLUE HEARTSも、いわゆるボーカル、ギター、ベース、ドラムという4ピースバンドの構成をとっています。代表曲である『リンダリンダ』は、THE BLUE HEARTSがメジャーデビューした時のデビュー曲です。サビの歌詞で「リンダ」を5回繰り返すような、硬派で一途でシンプルな歌詞とパンクサウンドで、当時の若い男子の心を掴みました。その後、1988年11月に『TRAIN-TRAIN』が発表され、それまでのパンクロックによる硬派で一途なイメージが定着していたということから、TBS系列の学園ドラマ『はいすくーる落書』の主題歌に起用されることになりました。これによって、THE BLUE HEARTSはロックシーンにおいて、パンクロックという新しいジャンルを確立していきました。

リンダリンダ

『TRAIN-TRAIN』

スピッツと同時代のバンド(J-ROCKとJ-POPの垣根がなくなる)

90年代のJ-ROCKシーンは、J-ROCK黄金時代とも言えるような時期でした。この時期には、80年代から90年代の初期に築き上げられてきたJ-ROCKのルーツを踏まえつつ、オリコンランキンの上位に入って、ミリオンセラーとなる楽曲作りが模索されていた時期でもあります。なので、この頃にヒット曲を作ってきたロックバンドの多くは、ロックだけでなく、多ジャンルの音楽やサウンド、ファッションなど様々な要素を組み合わせていて、そのバンドの独自のスタイルを持ったロックバンドが多くなっていきます。ここでは、90年代に活躍した6組のバンドを例にあげて、彼らがどのようなJ-ROCKを模索していたのかについて整理しています。

B’zブレイクビーツ、ハードロック)

B'zは、ボーカルの稲葉浩志さんと、ギターの松本孝弘さんの二人で構成されるロックユニットです。1988年にデビューシングルの『だからその手を離して』を発表しています。デビュー当初の音楽は、打ち込みとハードなギターを合わせたようなロックサウンドで、『BAD COMMUNICATION』に代表されるブレイクビーツのようなリズムの曲なども発表しています。90年代に入って、『LOOSE』というアルバムあたりから、深みのあるブルースサウンドだったり、ハードロックなジャンルの楽曲を発表するようになっていきました。また、B'zは、アルバム総売上枚数が約4,687.2万枚で歴代1位の記録や、シングル総売上枚数が約3,596.9万枚で歴代2位の記録など、J-ROCKシーンにおいて数々の記録を持っています。3

だからその手を離して

『BAD COMMUNICATION』

WANDS(ロック、ポップ)

WANDSは、ボーカル、ギター、キーボードの三人からなる3ピースのロックバンドです。このWANDSは当時、B'zと同じビーイングというレーベルに所属していて、90年代のJ-POPやJ-ROCKサウンドを牽引してきたロックバンドです。1991年にメジャーデビューをして、翌年の1992年に発表した3rdシングルの『もっと強く抱きしめたなら』でオリコン1位となりミリオンセールスを達成しました。WANDSは、王道なロックサウンドに打ち込みなどを加えた聞き馴染みの良い音作りが特徴となっています。そのためドラマやCMでのタイアップ曲も数多く手がけていて、歌われる歌詞も、それまでの硬派なイメージのJ-ROCKに比べると、男性や女性を問わず共感を得るような恋をテーマにした曲作りが多くなっています。

もっと強く抱きしめたなら

JUDY AND MARY(パンクロック、ポップ、ロリータ)

JUDY AND MARYは、女性ボーカル、ギター、ベース、ドラムのいわゆる王道的な4ピースバンドの編成のロックバンドです。もともとパンクロックな楽曲を制作していて、1993年に発表したデビューシングルの『POWER OF LOVE』は、彼らの原点とも言えるようなパンクロックの音楽性が前面に出たような楽曲になっています。JUDY AND MARYの楽曲のもう一つの特徴としてあげられるのが、サビまでのメロディーは激しめのパンクロックな曲調で、サビではとても聞きやすいポップなメロディーで構成されていることがあげられます。こうしたパンクとポップという緩急のあるような楽曲がJUDY AND MARYサウンドの特徴です。特に1997年に11枚目のシングル曲として発表された『クジラ12号』は、これまでのJUDY AND MARYが求めてきたパンクとポップが融合された完成度の高い楽曲となっています。また、彼らのファッションも注目され、ボーカルのYUKIさんのロリータファッションとそのパンクロックな楽曲と合わせて、カリスマ的な人気にもなりました。

『POWER OF LOVE』

『くじら12号』

Mr.Children(ロック、ポップ)

Mr.Childrenは、男性ボーカル、ギター、ベース、ドラムという王道的な4ピースバンドの編成のロックバンドです。1992年に発表したデビューシングルの『君がいた夏』では、青春の甘酸っぱい恋のエピソードの歌詞をポップで聞きやすいメロディーに乗せた王道的でロックサウンドな曲を発表しています。特に1994年に発表した『innocent world』では、初期の頃の青春時代の爽やかなロックという新しいJ-ROCKを開拓したことで、当時の若者に絶大な支持を得ました。一方で、同年の12月に発表された『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-』では、現代社会への風刺的なメッセージを込めたような歌詞を、エッジの効いたロックサウンドに乗せた楽曲なども発表していて、そうしたMr.Childrenのもつ、爽やかで青春の思い出ソングなポップサウンドと、現代社会への鋭い眼差しのエッジの効いたロックサウンドという二面性によって、その人気を不動のものにしました。

『innocent world』

『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-』

ウルフルズ(ファンクロック)

ウルフルズは、ボーカル兼ギター、ベース、ドラムの三人からなる3ピースバンドです。1992年に『やぶれかぶれ』でメジャーデビューしています。大阪出身のバンドであるということもあり、ウルフルズの歌詞は大阪弁で語られていることが特徴となっています。また、その大阪弁の歌詞をより特徴づけるために抑揚の多いソウルやファンクサウンドを取り入れた楽曲となっています。1995年に発表された9枚目のシングル『ガッツだぜ!!』では、ソウル、ファンク、ディスコ、ハウスミュージックなどこれまでにないような、様々な音楽ジャンルをクロスオーバーした楽曲を発表しています。一方で、『ガッツだぜ!!』が収録されている『バンザイ』という3rdアルバムに収録されていた『バンザイ 〜好きでよかった〜』では、ストレートな愛のメッセージの歌詞で、シンプルなロックサウンドな曲も作っています。この曲がシングルカットで発売されるとさらに人気に火がつき、ウルフルズ初のミリオンセラーとなりました。

『やぶれかぶれ』

『ガッツだぜ!!』

『バンザイ 〜好きでよかった〜』

シャ乱Q(ロック、ポップ、ビジュアル系)

シャ乱Qは、ボーカル兼ギター、ベース兼ギター、ドラム、キーボードの四人からなる4ピースバンドです。1992年に『18ヶ月』という曲でメジャーデビューをしています。シャ乱Qの特徴は、大阪出身のバンドであることを強調する80年代のようなコスチュームとメイクをしたビジュアル系という見た目のインパクトを重視したことなどがあげられます。一方で、『シングルベッド』のような男性の失恋への未練を描いた、情に訴えかける曲作りという、見た目と楽曲とのギャップによって人気となりました。1996年には、男性の女性への未練を全面的に描いた『いいわけ』を発表しています。この曲は、フジテレビ系木曜劇場『Age,35 恋しくて』の主題歌に起用されています。

『18ヶ月』

『シングルベッド』

『いいわけ』

このようにスピッツがデビューした頃の90年代のJ-ROCKシーンは、多くのミリオンセラーとなる曲が数多く発表されて、それに伴って、ロックバンド独自のスタイルが模索される時期でもありました。

センチメンタルロックの源流となったインディーズバンド

実は、スピッツがセンチメンタルロックな音楽を作るようになる以前にも、センチメンタルな歌詞とロックな音楽性を持ったバンドがいました。1989年2月から1990年12月までTBSで放送されていた『三宅裕司いかすバンド天国』という番組がありました。その番組では、アマチュアバンドが毎回何組か登場してきて、前回チャンピオンとなったバンドとチャレンジャーが対戦して、5週連続でチャンピオンを防衛したバンドがメジャーデビューできるという番組でした。その6代目の5週連続チャンピオンとなったのがJITTERIN’JINNでした。ここでは、そのJITTERIN’JINNがどのような音楽を作っていたのかについて、いくつかの楽曲を紹介しながらJITTERIN’JINNのセンチメンタルロックについて説明します。

JITTERIN’JINNスカロック、ロカビリー)

JITTERIN’JINNは、女性ボーカル、男性ギター、男性ドラムという3ピースバンドでした。1989年10月に『三宅裕司いかすバンド天国』の5週連続チャンピオンとなったことで、『エヴリデイ』という曲でメジャーデビューします。デビューシングルを発表してすぐの11月には『DOKIDOKI』というファーストアルバムを発表しています。その後も立て続けにシングルやアルバムを発表していて、翌年の1990年の9月までにデビュー曲とデビューアルバムを含めて4曲のシングル曲と、3枚のアルバムを発表しています。彼らの音楽性は、スカという1950年代にジャマイカで発祥したポピュラー音楽のジャンルをベースとしたスカロックと呼べるような音楽でした。そして、歌詞は若い時の初恋の恋心の芽生えのセンチメンタルな歌詞となっていて、そのセンチメンタルな歌詞とスカロックというエッジの効いたサウンドが特徴のバンドでした。特徴的な声の女性ボーカルということもあって、JITTERIN’JINNの音楽性は当時、際立っていました。

『エヴリデイ』 動画なし

SINKY-YORK

『SINKY-YORK』は、デビュー曲である『エヴリデイ』のカップリング曲として発表されました。この曲は16、17歳くらいの男子が恋心を寄せる同級生の女子との恋の始まりから、恋の終わりまでを描いた切ないラブソングとなっています。1番の歌詞のサビの部分にある「さよならのキス」でのキスは、初めて恋人同士になった時の、お別れのキスとなっていて、恋の始まりを描いています。2番目のサビ部分でも同じ「さよならのキス」がありますが、ここでは、別れ話をした後の最後のお別れの意味を持ったキスとして表現されています。このように、恋の始まりから、恋の終わりまでを、一つの「さよならのキス」という歌詞で表現されている歌詞の構造の美しさと、シンプルなスカロックサウンド、少しハスキーで抑揚のない歌い方などが合わさって、よりセンチメンタルな曲になっています。

『SINKY-YORK』

プレゼント

『プレゼント』は、1990年2月にセカンドシングルとして発表された楽曲です。1990年の頃だと、まだバブルが弾けてまもない頃ということもあり、バブルでの男女の恋の歌という設定になっているのだと考えられます。この曲は、女性目線で描かれていて、自分にさんざん貢いでくれる気になる男性には、実は別に彼女がいることがわかるという失恋ソングとなっています。この曲の歌詞はとてもシンプルで、「あなたがわたしにくれたもの」というシンプルな歌詞に、それまでにもらった様々な物や思い出などが綴られた歌詞になっています。そして、サビの部分でその男性には彼女がいたことが明らかになるということが書かれていて、それが失恋ソングだということがわかるような構造になっています。ここでも、このJITTERIN’JINNの歌詞の構造の美しさが、それまでの「あなたがわたしにくれたもの」という様々なプレゼントが、切ない思い出になっていることをより強調する歌詞になっています。

『プレゼント』

夏祭り

『夏祭り』は、1990年8月に発表された4枚目のシングル曲です。この曲は、のちにWhiteberryによってカバーされたことによって、有名な曲となっています。この曲は、ひと夏の恋を描いたような男性目線の歌になっています。神社で行われたお祭りでの恋人との思い出を描くような歌詞になっています。この曲の特徴は、いきなりサビから始まるということがあります。そのサビでは、夏休みに恋人と訪れた神社のお祭りでの回想シーンを思い出す導入となるような歌詞になっています。このサビがあることによって、失恋ソングであり、恋人と過ごしたひと夏の思い出にふけっている男性のイメージが浮かびます。そして、Aメロの歌詞、Bメロの歌詞では、その神社でのお祭りで過ごした恋人との思い出が描かれています。さらに、この曲は、ロックバンドとしては、めずらしく16ビートの早弾きのリズムになっていて、それによって疾走感や焦燥感をうむことで、そのひと夏の恋の切なさが、よりその一時期のセンチメンタルな思い出を強調している曲となっています。

『夏祭り』

スピッツの音楽性

スピッツは、90年代にミリオンセラーとなるような楽曲を作るために、多くのロックバンドが様々なJ-ROCKを模索するなか、独自の音楽スタイルを築いていきました。のちに、スピッツというジャンルと形容されるほど、スピッツは90年代のJ-ROCKシーンにおいて、独自のスタイルを貫いていたと言えると思います。ここでは、そのスピッツの独自の音楽スタイルをセンチメンタルロックと呼び、スピッツがどのようにしてこのセンチメンタルロックと呼べるような音楽スタイル、ジャンルに行き着いたのかについて整理していきたいと思います。

パンクロックを目指していたスピッツ

スピッツは、1991年に『ヒバリのこころ』という曲を発表してメジャーデビューをしました。実は、この時点で、スピッツは、すでにセンチメンタルロックと言えるような曲を制作しています。この『ヒバリのこころ』は、冬の終わりの雪解けの頃の季節の歌で、歌詞の内容から卒業する時の気持ちや、思いを寄せる恋人に対する気持ちなどが歌われています。ただ、メジャーデビューする前のスピッツは、大学の部活の先輩だった、FLYING KIDSとなったメンバーの演奏に刺激され、パンクをやることを決意したとあります。また、インディーズ時代のスピッツは、ビートパンクと形容されるような音楽をやっていたことなども知られています。4のちに、草野さん自身が、ハンドマイクで暴れたり、観客を煽ったりするスタイルが自分に似合わないと感じたことで、スコットランド出身のフォークロックのミュージシャンであるシンガーソングライターのドノヴァン5を意識するようになったことなどが知られています。

ヒバリのこころ

80年代のアイドルソングのような歌詞

スピッツの歌詞の特徴としてあげられるのが、80年代のアイドルソングのような歌詞ということがあります。特に、70年代を代表する日本のフォークロックバンドの、はっぴいえんどのバンドメンバーであった、松本隆さんと大瀧詠一さんの二人がアイドルソングとして提供した歌詞にある、季節感や情景などが浮かぶ描写と、その時に感じた切ない恋心や気持ちなどをスピッツの歌詞にも見ることができます。例えば、1981年に松田聖子さんに提供された『風立ちぬ』では、秋、高原のテラス、色ずく草原という情景とともに、心を揺らされながらも、別れを決意する女性の切ない気持ちが描かれています。また、1983年に薬師丸ひろ子さんに提供された『探偵物語』では、激しい潮騒とか、早い夏の陽などの情景や季節と、その情景の中にいる女性の揺れ動く気持ちなどが描かれています。一方で、スピッツの歌詞をみてみると、例えば、1993年に発表された7枚目のシングル曲の『君が思い出になる前に』では、水の色、風のにおい、虹など、時間とともに移ろいやすいものの例えを、出会ったころの君との思い出と重ねるような表現で切ない気持ちをあらわしたりしています。

風立ちぬ

探偵物語

『君が思い出になる前に』

ロビンソンにみるセンチメンタルロック

1995年に発表された11枚目のシングル曲の『ロビンソン』で、オリコンチャートトップ10に初めてランクインし、2020年現在、スピッツの最大のヒット曲となっています。6この曲は、 売上が162万枚を超える大ヒットを記録しました。この『ロビンソン』という曲は、スピッツの独特な比喩表現が数多く使われている曲としても知られています。例えば、サビの部分の「ルララ 宇宙の風に乗る」といった比喩表現は、その受け手によって様々な解釈ができるような歌詞になっています。また、その前にある、「誰もさわれない 二人だけの国」といった表現も、ある種の文学のような純粋で、永遠な、二人だけの時間をあらわしているような表現などもあります。一方で、サビに入る前の歌詞では、「なぜかせつない日々」だったり、2番では、「片隅に捨てられて 呼吸をやめない猫」など、何かの終わりを予感させるような歌詞などもところどころに散りばめられていて、それによって、サビの部分の「ルララ 宇宙の風に乗る」といった比喩表現が、受け手によって、またはその時のその受け手の気分によって変化するような歌詞になっています。

『ロビンソン』

インディゴ地平線によるスピッツというジャンルの確立

スピッツが、スピッツというジャンルと言われるようになったきっかけとなったアルバムが『インディゴ地平線』からではないかと、筆者は考えています。この『インディゴ地平線』は、1996年に7作目のオリジナルアルバムとして発表されました。このアルバムに収録されている歌詞の特徴は、それまでのような抽象的な世界観を描くものではなく、その情景がイメージできるような歌詞が多く収録されています。例えば、『ナナへの気持ち』では、「街道沿いのロイホ」で夜更けまで二人で話し込むという具体的なシーンが描写されていたりします。また、このアルバムのタイトルにもなっている『インディゴ地平線』では、インディゴ・ブルーという特定の色を指定して、希望のクズと表現している、現実に打ちのめされそうな、二人の恋の行方への不安な気持ちをインディゴ・ブルーという色であらわしています。こうしたスピッツの独特な、ある情景や季節、二人の関係などいくつかの条件が重なった時に訪れる時に思う瞬間的な気持ちをリアルに描いているのが、スピッツスピッツというジャンルと言われうようになった要因なのだと考えられます。

『ナナへの気持ち』 動画なし

インディゴ地平線

センチメンタルロックなバンド

スピッツのようなセンチメンタルロックを、その瞬間に思った気持ちを、情景や、関係などを文学的に表現している歌詞をエッジの効いたロックに乗せた曲として定義してみると、近年はセンチメンタルロックに分類できそうなロックバンドが増えてきているように思います。そこで、ここでは筆者が考えるセンチメンタルロックだなと思う、四つのバンドとその曲を紹介してみたいと思います。

いきものがかり(KIRA★KIRA★TRAIN)

いきものがかりは、2006年に『SAKURA』でメジャーデビューした、女性ボーカル、ギター二人による3ピースバンドです。15枚目に発表された『YELL』では、NHK全国学校音楽コンクール中学校の部の課題曲として制作されたということもあって、この『YELL』も含めて、『SAKURA』『ありがとう』『歩いていこう』など、卒業シーズンの定番ソングとなるような曲も数多く発表しています。2007年に発表されたファーストアルバムの『桜咲く街物語』に収録されている曲に、『KIRA★KIRA★TRAIN』という曲があります。この『KIRA★KIRA★TRAIN』は、高校三年生の卒業シーズンを思わせる「三回目の冬」という表現だったり、導入部の「突然の雪」や「Tokyoの空に走り書きした夢」、「僕は汽車に乗る」といった具体的な情景を連想させる数々のフレーズが散りばめられており、それが雪国に住んでいる高校三年生の卒業を意味していて、これからまさに汽車に乗って、東京に上京するその瞬間に感じた、故郷を離れる寂しさと、東京への期待の気持ちに揺れ動く若者の心情が美しく描かれています。

『SAKURA』

『YELL』

『ありがとう』

『歩いていこう』

『KIRA★KIRA★TRAIN』

SHISHAMO(君の隣にいたいから)

SHISHAMOは、ボーカル兼ギター、ベース、ドラムの女性三人からなる3ピースガールズバンドです。2010年に高校時代の軽音部で、ボーカルの宮崎さんと、元メンバーの松本さんが二人でバンドを結成し、そのあとに同級生の吉川さんがドラムとして加わり、柳葉魚というバンドで活動を始めたのが最初です。7シングル曲としては、2014年に『君と夏フェス』を初期メンバーで発表し、その後のセカンドシングル曲の『量産型彼氏』からは現在のメンバーでの楽曲制作となっています。2017年に発表されたオリジナルアルバム『SHISHAMO 4』に収録されていた『明日も』がドコモのCMソングに使用されたことによって、一躍、全国区の人気ガールズバンドとなりました。また、2019年には、NHK全国学校音楽コンクール中学校の部の課題曲として作られた合唱曲である『君の隣にいたいから』を発表しています。この『君の隣にいたいから』の歌詞は、

「縦結びになったスニーカーの紐を直すこともせず 今日もただ歩いているだらしない私」

という、このいち文でどういう女子像なのかを具体的にイメージできるような導入になっています。それによって、その異性に、気を使えないちょっと不器用な女子が、気になる男子に対して、自分の恋心を持って、素直にちゃんと向き合えたかどうかを問いかける少女漫画に出てくるような可愛い乙女心をリアルに描いています。

『君と夏フェス』

『量産型彼氏』

『明日も』

『君の隣にいたいから』

Official髭男dism(Pretender)

Official髭男dismは、2018年にファーストシングル『ノーダウト』を発表してメジャーデビューしました。ボーカル兼キーボード、ギター、ベース、ドラムの男性四人からなる4ピースバンドです。デビュー曲の『ノーダウト』は、フジテレビ系月9テレビドラマ『コンフィデンスマンJP』のドラマ主題歌として使用されており、デビュー当時から有名バンドとなりました。2019年に発表されたセカンドシングルの『Pretender』も、映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』の主題歌として使用されることで、この『Pretender』もヒット曲となり、ロングヒット曲となりました。この『Pretender』は、好きな相手との失恋の気持ちを描いた歌詞になっています。恋人同士となった相手と長続きしないことを悟った僕が、もっと違う関係、もっと違う性格、もっと違う価値観で出会えたらよかったと、この世界線で出会ってしまったことを後悔しているかのような切ない恋愛模様を描いています。

『ノーダウト』

『Pretender』

SHE’S(Letter)

SHE’Sは、2011年頃からバンド活動を初めて、2016年にファーストシングルの『Morning Glow』を発表してメジャーデビューしています。ボーカル兼ギター兼キーボード、ギター、ベース、ドラムの男性四人からなる4ピースバンドです。2017年には『プルーストと花束』という『失われた時を求めて』を書いたマルセル・プルーストをテーマにしたようなアルバムを発表しており、そのバンドの方向性として文学的関心の高さが伺えます。2019年に配信限定シングルとして発表された3rdシングルの『Letter』が、翌年の2020年に、任天堂「あつまれ どうぶつの森×Nintendo Switch Lite」 2020春 CMソングとして使用され、有名になりました。この『Letter』という曲は、塞ぎ込みがちなひとりの男性の切ない思いみたいなものを表現した曲になっています。大人になり、変わっていくことで、自分が自分でなくなってしまうのではないかという恐怖心と戦っている心情が描かれています。「あなたを守れるほどの優しさを探している」という歌詞に込められているように、大人になることで失われてしまう何かを確かめながら、それでも前に進んでいこうとする現代的な若者の等身大の姿が描かれています。

『Morning Glow』

『Letter』

ポストモダンはなぜ終わりを迎えたのか?【ポストモダンからデジタルモダンへ 〜これからのデジタル推進の波に備えよ!〜】

今年に入って、菅政権の目玉政策の一つであるデジタル庁や、東京都の行政サービスのデジタル化の推進、経済産業省によるIT人材の育成を推進するためのデジタルトランスフォーメーション政策、内閣府が発表している人間の能力を拡張するサイバネティック・アバターを基盤とするムーンショット目標など、次々とデジタルガバメントと呼べるような政策が打ち出されています。一方で経済の方に目を向けてみても既存通貨のリスクヘッジとして再び注目され始めた暗号通貨や、政府が進めるデジタル通貨の発行検討の議論など、経済や社会のデジタル化の推進が急速に高まっています。この記事では、これらのデジタル化の推進を、ポストモダンの終わりという観点から眺めて、それを思想的な変化として捉えることで、その変化をデジタルモダンの始まりであるという仮説を立てて論じています。

ポストモダンとは?

ポストモダンの歴史 

ポストモダンとは、ポスト構造主義とも呼ばれています。その元となった構造主義とは、言語学者ソシュールの哲学の中で構造主義的な考え方というのがあり、それを引き継ぐ形で、言語学者のルイス・イェルムスレウやロマーン・ヤーコブソンのほか、クロード・レヴィ=ストロースモーリス・メルロー=ポンティロラン・バルトらによってそれぞれの立場から様々な構造主義が実践されました。このうちクロード・レヴィ=ストロースは、ソシュールの考えた構造主義の手法を社会分析に適応させて、一方で、ロラン・バルトは、物語分析などに構造主義の手法を適用していく中で構造主義の実践がされてきました。その後、ミシェル・フーコージャック・デリダらによって、構造主義を批判的に展開したことによって誕生したのがポスト構造主義と呼ばれる思想です。彼らが構造主義を批判的に捉えて実践してきたのがポスト構造主義であり、それがいわゆるポストモダン思想ということになります。

ポストモダンの展開

ポストモダン思想の代表的な思想家の一人に、ジャック・デリダがいます。ジャック・デリダの思想は、主に差異と差延ディコンストラクションといった考え方があります。ジャック・デリダにおける差異とは、フランス語のdifférenceという名詞の日本語訳で、異なるという意味で使われます。一方の、差延というのは、différenceの動詞の現在形différantを経由して名詞の形になったdifféranceの日本語訳で、主に、遅らせ、先延ばしにし、留保し、後にとっておく、といった意味として理解されています。また、ジャック・デリダが扱っていた、ディコンストラクションという概念とは、二項対立の構図の批判から生み出されたもので、わかりやすく解釈すると第三の選択肢、もしくはオルタナティブというニュアンスで理解することもできます。

80年代のニューアカデミズムの流行

1980年代に、ポストモダンの代表的な思想家として浅田彰氏の『構造と力』という書籍が出版されました。1それまで、人文系のアカデミズムというのは、研究室にこもって、自身の試論を探求するだけの閉ざされた領域と思われていましたが、この浅田彰氏の『構造と力』がベストセラーとなったことで、研究者が自らの実践研究を社会に適応させて解釈するというようなニューアカデミズムと呼ばれる書籍の出版が流行しました。このニューアカデミズムの主な特徴というのは、キャッチコピーのようなセンセーショナルなタイトルと、エッセイのような平易な文章で書かれて誰にでも読める論文であるという特徴があります。特に80年代後半から90年代半ばまで、こうしたニューアカデミズムの人文系の社会学者たちが、雑誌での連載記事を持ったり、テレビなどで取り上げられるなどして、もてはやされたという歴史があります。

2001年代以降のポストモダンの思想家たち

2001年以降になると、911テロが起きたことによって、世界不安や不確実性といったことが取り上げられるようになりました。そうした情勢の変化の中でポストモダンの思想家たちは、社会の複雑性を説明するような社会学や社会を一つのシステムとして捉えることで、その世界不安や不確実性がなぜ起こるのかという問いに応えようとしてきました。このころの代表的なポストモダンの思想家たちの特徴というのは、アメリカの哲学者であり社会学者であるタルコット・パーソンズを批判的に論じた二クラス・ルーマンをはじめとする、複雑系科学などの難解な概念を持ち込んだ文章が特徴となっています。こうしたニクラス・ルーマンのようなシステム理論を展開して、社会の全体性を捉えようとするというのが2001年以降のポストモダン思想の特徴となっています。

ポストモダンの事件簿

ソーカル事件

ポストモダン思想にまつわる事件として有名なのがソーカル事件です。21995年に、当時ニューヨーク大学物理学教授だったアラン・ソーカルが、ポストモダン思想家の文体をまねて科学用語と数式をちりばめた無内容な論文を作成し、これをアンドリュー・ロスが編集長をつとめていたポストモダン思想専門の学術誌『ソーシャル・テキスト』に送ったところ、そのまま受理・掲載されてしまいました。その後、アラン・ソーカルは、その論文がでたらめな内容だったことを暴露し、それを見抜けず掲載した専門家を指弾したという事件がありました。そして、アラン・ソーカルは、一部のポストモダン思想家が自分の疑似論文と同様に、数学・科学用語を権威付けとしてでたらめに使用しているということを主張しました。1997年にはソーカルはジャン・ブリクモンとともに『「知」の欺瞞』という著作を発表しました。3この著作の原題は "Impostures Intellectuelles"で「知的詐欺」を意味しています。この著作の中でソーカルは、ジャック・ラカンジュリア・クリステヴァ、リュス・イリガライ、ブルーノ・ラトゥール、ジャン・ボードリヤールジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ、ポール・ヴィリリオといったポストモダンの思想家を中心に、哲学者、社会学者、フェミニズム信奉者らの自然科学用語の使い方が、自分の作成した疑似論文と同様にいいかげんで無内容だと主張したという歴史があります。

山形浩生浅田彰の対峙事件

先ほどのソーカル事件を受けて、山形浩生さんが浅田彰氏の『構造と力』に出てくるクラインの壺を例に挙げ、ソーカル事件と同じような方法で指摘をしたことで、今でいう炎上騒ぎになったことがあります。これは元々は、CUTというファッション雑誌のなかで山形浩生さんの連載記事で書かれたものでした。この連載記事では、『『知』の欺瞞』という書籍のレビューを行なっており、その中でポストモダン思想に触れたことがきっかけでした。4この記事の中で山形浩生さんは、浅田彰氏の『構造と力』を例に挙げ、「浅田彰クラインの壷の比喩が、実はぜんぜんまちがっている」と指摘しました。その後、菊池和徳氏が、浅田彰氏の言っているのは「中身のあるクラインの壺」と解釈すべきで、そう解釈したときは循環すると言えるといった反論などもありました。ただ、最終的な山形浩生さんの結論としては、

1.この内部のところで点線を使っていること。
2.この「口」のところにいかにもな膜が張ってあって、そこに「商品」が載っているような描き方になっていること。
3.その口の部分がなんだか開いて、らっぱみたいになっていて、パイプの接続部分が鋭角になっていること。

という3つのポイントを挙げて、浅田彰氏のクラインの壺のたとえ話はまちがっていると結論づけました。

建築家と思想家との共犯関係のレトリック

このポストモダン思想というのは、社会だけでなく芸術や建築に対しても影響を及ぼしています。例えば、ジャック・デリダデコンストラクションという概念からその建築的な実践として、フランク・ゲーリー、ダニエル・リベスキンドピーター・アイゼンマン、コープ・ヒンメルブラウ、ザハ・ハディドレム・コールハース、バーナード・チュミらの建築家がディコンストラクショニズムというスタイルの建築を作りました。5日本でも同様に、浅田彰氏と建築家の磯崎新氏によって、ポストモダン建築と呼ばれる建築が作られ、彼らのテクストは、建築のコンセプトや意匠論へと転用されました。このようにデコンストラクションのような二項対立とは別の選択肢、オルタナティブをよりどころにしたレトリックによってポストモダン系の思想家と建築家との共犯関係が成立していたということがあります。

日本における人文系社会学者への批判

一方で、人文系社会学者に対する批判ということもあります。彼らの研究調査の手法の多くは、いわゆる定性的な研究であることが大半であり、その具体的な手法というのはフィールドワークやインタビューなどが主なものになります。そうなると、定量的な手法で研究している社会科学の専門家からは客観性が乏しいのではという批判があります。また、こうした定性的研究のテーマとしてあげられるのがあるコミュニティに潜入して調査するような文化人類学的な研究や、政治家や有名人などの人物像に迫るような研究というのがあります。この場合の研究手法というのは、前者の場合は、主にフィールドワークによる調査で、後者の場合は、インタビューを通じて行う研究ということになります。しかし、これらのどちらにおいても、客観性の乏しさと再現性の難しさということがあります。以上のことからポストモダン社会学者の研究手法のフィールドワークとインタビューの客観性の欠如と、再現性の難しさによってその人文系社会学者の研究が批判されることが多くあります。

なぜポストモダン思想は終わりを迎えたのか?

考察その1:論点をすり替えるロジックを正当化して終わりを迎えた

ここで何故ポストモダン思想は終わりを迎えたのかをもう一度整理してみたいと思います。おそらくその一つの要因としては、玉虫色と揶揄された、ポストモダンのレトリックによるロジックの展開は、ポストモダンの思想家や社会学者たちが、その時代ごとに自身のポジションを変えて、蓮の葉をポンポンポンと渡り歩くようにして、その都度、論点をすり替えながら逃げるスタイルで活動していたからなのではないかと考えられます。実際に、浅田彰氏の自身の著作のなかには『逃走論―スキゾ・キッズの冒険』というタイトルがありますが、ここで言われているのは、スキゾ、つまり逃走することが人間の知性であり、それに対峙するパラノは偏執症であり病気であると論じています。6しかし、これは一歩間違えると他人を欺き、騙し逃げるということにもなり得るロジックであるためその主張の妥当性が疑われたのではないかと思われます。

考察その2:レトリックと欺瞞のテクストを大量生産して終わりを迎えた

もう一つの理由として考えられるのが、ポストモダンモダニズムを批判的に論じることによって発展してきたという歴史があります。その結果、レトリックと欺瞞のテクストを大量に生み出したことによって、その信頼性を失い、終わりを迎えたということが挙げられるのだと考えられます。先ほどのソーカル事件や、建築家との共犯関係によって作り出されたレトリックとしての意匠論など、実際には研究の手法としては、定性的研究であって、現代社会で重要とされているデータによる定量的な事実確認ができないような手法で書かれた論文ということがあります。一方で、21世紀に入ると、それまでの言葉のレトリックやメタファーによる文章よりも、データや統計学などを用いたいわゆる『ファクトフルネス』7で示されたような文章が受け入れられるようになったことによって、ポストモダン思想的なレトリックやメタファーによる文章の信頼性が失われてきたということが考えられます。

考察その3:難解な概念の論理性の疑義によって終わりを迎えた

一方で、2001年以降に論拠とされた複雑系科学やシステム理論のようなある難解な概念を用いることで全体性を説明しようとするポストモダン思想の試みは、結局のところ、一般には理解できないような難解な概念を多用することになってしまいました。さらに、そこで使われた難解な概念というのは、現実には実装不可能なシステム理論を提示したということで、その論理性の疑義によって終わりを迎えたのではないかと考えられます。例えばニクラス・ルーマンのシステム理論などを例に挙げると、このシステム理論で使われる有名な概念としてオートポイエーシスという概念があります。8これは元々は、生物学者のウンベルト・マトゥラーナとフランシスコ・バレーラによって、生命の有機構成とは何かという本質的な問いを見定めるものとして提唱された概念です。しかしながら、このニクラス・ルーマンのシステム理論では、このオートポイエーシスがどのように実装されるのかまでは触れられていませんでした。こうしたことから、このような実装できない難解な概念の疑義によって信頼性を失ったものと考えられます。

考察その4:数学・化学用語を間違ったメタファーで使ったために終わりを迎えた

アラン・ソーカルが指摘したように、一部のポストモダン思想家がソーカルの疑似論文と同様に、数学・科学用語を権威付けとしてでたらめに使用したことによって信頼性を失い、終わりを迎えたと考えられます。9それは、ごく狭い一部の人文系の社会学者のカースト維持のための理論であることが徐々に明らかになってきたともいえます。そのことによってポストモダン思想というのは、一部の人文社会学者のカースト維持のための文章だということが知られるようになって、その結果、信頼性を失い終わりを迎えたのだと考えられます。また一方で、数学や化学用語を用いたそれらのポストモダン思想のテクストというのは、山形浩生さんの記事の指摘のように、実際の社会を説明するような理論になっていないことも同時に明らかになってきて、その役割を終えたのではないかと考えられます。

ポストモダンからデジタルモダンへ

デジタルモダンとは?

ではポストモダンが終わりを迎えたとして、次の時代に向けて思想はどのように変化していくのでしょうか?ここでは、一つの仮説を立てることから考えてみたいと思います。仮にポストモダンの次におとずれる思想がデジタル社会を推進する思想もしくは哲学であると仮定してみると、それはデジタルモダンと呼べるような思想になるのではないかという仮説です。このデジタルモダンはどのような位置付けの思想として定義できるのかについて整理してみたいと思います。

モダニズムの正統的な継承としてのデジタルモダン

一つ、デジタルモダンの定義を考える手がかりとしてあげられるのが、正当なモダニズムの継承としてのデジタルモダンという位置付けです。つまり、ポストモダンは当初、伝統的なモダニズムを批判し脱却するところからその思想を展開してきたという歴史があります。このポストモダンが終わりを迎えたとすると、それはポストモダンを批判的に展開するという考え方なのではなくて、本来のモダニズムの考え方をデジタル技術によってより深めていこうとする思想としてデジタルモダンを位置づけることができるのではないかという仮説です。

デジタルモダンとはモダニズム復権

そのようにデジタルモダンという新しい思想が始まったというように仮説を立てるとすると、デジタルモダンはモダニズム思想の復権とも位置づけることができると考えられます。それは、いわゆる近代化で成し遂げられなかったさまざまな諸問題をデジタル技術を推進していくことで解決していくという考え方になるのだと思います。筆者の立場としては、このようなポストモダンの終わり、そして新しい考え方のデジタルモダンという思想が始まったという仮説のもと、これからの経済や社会についてデジタルモダンというパースペクティブから捉えていくことが重要なのではないかという立場で考えていきたいと思っています。

これからの10年でデジタルモダンが進む理由

筆者は、先のようなデジタルモダンと呼べるような、デジタル技術を推進していくような考え方がこれから先10年で急速に進むと考えています。その理由として、近年のディープラーニングブロックチェーン技術を含む情報技術の急速な進化が挙げられます。ディープラーニングを含めたいわゆるAIまたは人工知能と呼ばれる技術は、主に音声認識、画像認識、自然言語認識の三つの分野に分けて整理することができます。2010年頃から人間の脳を模したニューラルネットワークアルゴリズムを多層化することで実現したディープラーニングの登場によって以降、様々な分野で成果を出しています。一方の、ブロックチェーン技術は、2010年頃に発表されたビットコインアルゴリズムとして提案された金融の情報技術です。近年ではこのブロックチェーン技術の応用範囲の広さが注目され、金融以外の社会設計の分野にも実装できるのではないかということで、アメリカの有名大学でも盛んにブロックチェーンに関する研究が進められています。このようなことからも、これからの10年で社会のデジタル化や社会制度のデジタル実装といったことがますます進むと考えられます。

デジタルガバメント元年

デジタル庁の創設

2020年になって、デジタル庁の創設、東京都の行政サービスのデジタル化、デジタルトランスフォーメーション、ムーショット目標など、デジタルガバメント元年と呼べるような多くのデジタル政策が打ち出されています。この中で、菅政権の目玉政策として打ち出されたのが、デジタル庁の創設です。これは主に行政のデジタル化を牽引することを目的としたものです。日経新聞の記事によると、2020年内までにデジタル庁創設に向けた基本方針をまとめることになっています。10このデジタル庁の主な役割というのは、各省庁にある関連組織を一元化し強力な司令塔機能を持たせることで、新型コロナウイルス禍で露呈した行政手続きの遅さや連携不足に対応することと伝えています。具体的には、各府省庁のシステムの一括調達を進めてデータ様式を統一していくことで、省庁間だけでなく地方の自治体や行政機関の間でもスムーズにデータをやりとりし、行政手続き全般を迅速にすることなどがその役割として挙げられています。また、菅政権は行政のデジタル化を進める重要な手段としてマイナンバーカードをあげています。普及促進に向けて健康保険証や運転免許証など、個人を識別する規格の統合をめざすことで、カード1枚で行政手続きが済むよう改善する戦略を実行する組織にするとこの記事では伝えています。

東京都の行政サービスのデジタル化

一方で、東京都の行政サービスのデジタル化についても、注目が集まっています。同じく日経新聞の記事によると、東京都は2020年8月28日に、行政サービスのデジタル化や規制緩和などを検討する構造改革推進チームを立ち上げたと伝えています。11この記事では、東京都は今後、デジタル空間に都庁を作り上げる「バーチャル都庁構想」を検討し、行政サービスの使い勝手を高めるとしています。そして、都庁の業務のあり方も抜本的に見直す方針であると伝えています。具体的には、

1.業務のゼロベースでの見直し。
2.情報通信技術(ICT)などの最先端技術の徹底活用。
3.規制の見直し。

という3本柱を中心とした改革に取り組む考えを示したと記事は伝えています。また、この行政サービスのデジタル化や規制緩和などを検討する構造改革推進チームは、今後の社会のあり方について有識者から意見を聞くとともに、都政のデジタル化に向けた具体策などを検討するとあります。そして、2020年度中に「都政の構造改革実行プラン(仮称)」をまとめて、改革を前に進めると記事は伝えています。

デジタルトランスフォーメーション

さらにこれらのデジタル庁の創設や東京都の行政サービスデジタル化とは別に、経済産業省もデジタル化推進の政策を出しています。このデジタルトランスフォーメーションとは、ウィキペディアでは以下のように定義しています。12

デジタルトランスフォーメーション(英: Digital transformation; DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。デジタルシフトも同様の意味である。2004年にスウェーデンウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる 。ビジネス用語としては定義・解釈が多義的ではあるものの、おおむね「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味合いで用いられる。

そして経済産業省は、このデジタルトランスフォーメーションを推進させるために以下の課題と対応策を挙げています。13

課題

  • 既存システムの問題点を把握し、いかに克服していくか、経営層が描き切れていないおそれ
  • 既存システム刷新に際し、各関係者が果たすべき役割を担えていないおそれ
  • 既存システムの刷新は、長期間にわたり、大きなコストがかかり、経営者にとってはリスクもあり
  • ユーザ企業とベンダー企業の新たな関係の構築が必要
  • DX人材の不足

対応策

  • 見える化」指標、中立的な診断スキームの構築
  • 「DX推進システムガイドライン」の策定
  • DX実現に向けたITシステム構築におけるコスト・リスク低減のための対応策
  • ユーザ企業・ベンダー企業間の新たな関係
  • DX人材の育成・確保

このようなデジタルトランスフォーメーションの推進といったことからもデジタルガバメント元年と呼べる年になっていると考えられます。

ムーンショット目標

さらに、このデジタル推進を牽引する政策として、内閣府が発表しているムーンショット目標というものがあります。14このムーンショット目標というのは、社会、環境、経済という三つの領域に対して、長期的に達成すべき7つの目標を掲げているというものです。その中でも特に注目したいのが、目標1の2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会の実現を目指すという目標です。この目標には、誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター基盤を構築するとあります。具体的には、2050年までに、複数の人が遠隔操作する多数のアバターとロボットを組み合わせることによって、大規模で複雑なタスクを実行するための技術を開発し、その運用等に必要な基盤を構築するとあります。また、2030年までに、1つのタスクに対して、1人で10体以上のアバターを、アバター1体の場合と同等の速度、精度で操作できる技術を開発し、その運用等に必要な基盤を構築するという目標を立てています。最終的には、2050年までに、望む人は誰でも身体的能力、認知能力及び知覚能力をトップレベルまで拡張できる技術を開発し、社会通念を踏まえた新しい生活様式、サイバネティック・アバター生活を普及させると書いてあります。筆者としては、このようなサイバネティック・アバター生活を実現するような考え方としてデジタルモダンという仮説を位置付けられるのではないかと考えています。

デジタルモダンのテクノロジー

ディープラーニング

デジタル政策を推進するようなデジタルガバメントというのは実際、どのようなテクノロジーによって進められるのでしょうか?ディープラーニングは、これからもっとも進化をすると期待されているテクノロジーの一つです。2006年にジェフリー・ヒントンによって、ニューラルネットワークを多層に積み重ねることが提唱されるようになり、劇的な進化を遂げました。15このディープラーニングというのは、一般的にニューラルネットワークの中間層が2層以上のものとして定義されていることが多いです。そして、ディープラーニングの元となっているニューラルネットワークというのは、入力層と中間層と出力層の3つからなるパーセプトロンを使ったネットワークになっていて、入力層から与えられたデータを中間層でシグモイド関数やReLu関数と言った活性化関数で計算して出力層にデータを渡すような処理をしています。16このような処理を2層以上重ねたものがディープラーニングアルゴリズムとなっています。

ブロックチェーン

一方で、デジタル政策を推進するであろうテクノロジーの一つとして、ブロックチェーン技術があげられます。ブロックチェーンというのは、2008年にサトシ・ナカモトという名前を使った人物が、暗号通貨ビットコインの公開取引台帳としての役割を果たすために発明したものです。17このブロックチェーンで使われるのが、暗号化技術、コンセンサスアルゴリズムP2P(ピア・トゥ・ピア)、分散型台帳技術の4つです。このうち暗号化技術は、ブロックという単位でデータを生成し、そこに元のデータを推測できないハッシュ関数からなる暗号化されたデータを生成し、それを次のブロックに引き継ぐというようなもので、これによってデータが改ざんされることを防ぐことができます。コンセンサスアルゴリズムについてはいろいろありますが、ビットコインでは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)というアルゴリズムが使われています。このプルーフ・オブ・ワーク(PoW)というのを改ざんしようとする場合は、51% 攻撃と呼ばれるひとつのノードが全体の計算能力の過半数を支配する必要があります。そのため、それにかかるコストの割に、リターンが少ないということになります。このような考え方から改ざんを防ぐというのがこのアルゴリズムとなっています。これにコンピュータ1台1台がノードになるP2Pと、1台1台のコンピュータが監視役となる分散型台帳技術という4つの技術を合わせたものがブロックチェーン技術となります。

マイクロコンピュータ

さらに、デジタル政策を推進するテクノロジーとしてあげられるものとして、マイクロコンピューターというものがあります。これは通常のパーソナルコンピュータとは異なり、コンピューターとして機能するための最低限の仕様で構成されたものでシングルボードコンピュータとも呼ばれています。このマイクロコンピューターの製品として有名なのが、Raspberry PiとJetson Nanoの2製品です。Raspberry Piは主に、センサーやカメラなどを取り付けて、センサーからのデータを受けとる際に使用される停電力のコンピューターです。例えば、Raspberry Piに温度センサーを取り付けて、そのデータをデータベースに保存していくといった使い方などで使用されます。18一方のJetson Nanoは、これはNVIDIAというGPUを主に開発している企業の製品で、主にディープラーニングのような画像認識などの処理を行うために使用します。19例えば、ウェブカメラから受け取った動画映像に対して、物体検知などのようなディープラーニング処理をリアルタイムで行うなどの使用方法が想定されます。

クラウドコンピューティング

最後にもう一つ、デジタル政策を推進する技術としてあげられるのがクラウドコンピューティングです。クラウドコンピューティングというのは、主にAmazonが提供しているAWSGoogleが提供しているGCPマイクロソフトが提供しているAzureの三つがあります。それぞれの企業によって若干のサービスは異なりますが、基本的にはインターネット経由からデータセンターにアクセスして、これらのクラウドサービスの契約に応じたリソースを使用することができるというものです。例えば、Amazonが提供しているAWSを例に挙げると、AWSのストレージサービスを使って、そこに自社のウェブサイトをアップしてホームページを立ち上げるといったことなどがあげられます。20それ以外だと、Googleが提供しているGCPを利用した場合の例を挙げると、GCP上のコンピュータを利用して、複雑なディープラーニング機械学習の学習モデルの計算をクラウド上で行うことなどが想定されます。この場合だと、手持ちのコンピュータの方では特にマシンスペックは必要なく、インターネット経由で操作しているGCP上のコンピュータを使って計算を行うことができます。21

デジタルモダンのビジネス

AI

実際にこのような新しいテクノロジーを用いてどのようなビジネスが行われているのでしょうか?近年注目されているのが、イスラエルのスタートアップ企業です。現在、イスラエルでは、AIなどの最先端の技術を提供する多くのスタートアップ企業が誕生しており、中東のシリコンバレーと呼ばれています。22例えば、パートナー企業にボッシュIBMサムスンインテルマイクロソフトなどがあるAllegro.aiでは、機械学習オープンソースツールを提供しています。また、パートナー企業にマイクロソフトサムスン、オラクルなどがある、BrandTotalというスタートアップ企業では、AIを活用したマーケティングツールを提供しています。さらに、DataGenというスターアップ企業では、ディープラーニングの一つである敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks=GAN)を用いて、AR/VR、ロボット、 自立走行車、 無人ストア、セキュリティ、IoTなどの分野での取引を想定した、リアルなイメージデータを生成し販売を行なっています。

フィンテック

一方で、ITと金融を融合したフィンテックと呼ばれる分野においても、新しいテクノロジーが活用されています。特に従来の銀行のような中央集権型金融に変わる新しい分野として、分散型金融と呼ばれる分野の成長がアメリカを中心に始まっています。いわゆる暗号通貨と呼ばれている、ビットコインイーサリアムリップルなどもこのフィンテックに分類されます。一時期、ビットコインは投資が加熱してバブルが崩壊しましたが、最近はまた投資が盛り上がってきていて、金の代替え資産や既存通貨のハイパーインフレに備えたリスクヘッジ資産としての人気が高まっています。その中でも特に盛り上がっているのがDeFiと呼ばれる分散型金融です。DeFiというのは、decentralized financeの略で、これまでのような中央集権型金融のように人を介さずに金融取引が行えるというものです。2020年8月頃からDeFiへの投資が大幅に増加し、DeFiバブルと呼ばれるような現象もおきています。23

ロボット

AIやフィンテック以外にも、これから発展すると言われている新しいテクノロジーを使ったビジネスがあります。アメリカにあるボストン・ダイナミクス社は、1992年に、マサチューセッツ工科大学においてロボットと人工知能を研究していたマーク・レイバート氏が設立した企業です。ボストン・ダイナミクス社では、これまでにビッグドッグ、ワイルドキャットなど、多くのロボット製品を開発してきました。ボストン・ダイナミクス社がこれまでに開発してきたロボットには、主に荒地などでの運搬用として開発した四足歩行ロボットや、壁や木、フェンスなど垂直な構造物を登ることができる小型ロボット、バク転などアクロバティックな動きができる人型ロボットなどがあります。その中でも近年開発された四足歩行ロボットのSPOTや人型ロボットのATLASは、驚くべき運動能力を搭載しています。24このうち四足歩行ロボットのSPOTは市販もされており、日本円で約800万円で購入可能となっています。

ロケット

ロボットともう一つ注目されている分野なのがロケットです。イーロンマスク率いるスペースX社(Space Exploration Technologies Corp.)は、ロケットや宇宙船の開発、打ち上げといった宇宙輸送を業務とするアメリカの企業です。スペースX社は、2000年代に数多く創設された民間宇宙ベンチャーの一社ですが、ベンチャー企業にも関わらず、低コストでのロケット事業で商業衛星市場で大きなシェアを獲得しています。近年では、このスペースX社は、小型通信衛星を高度540〜570キロメートルの低軌道に送り込み、次世代型衛星ネットワークを構築するスターリンク計画をすすめています。25このスターリンク事業が進むと、地球上のどこからでも高速ブロードバンドインターネットの提供を受けることができるようになるというものです。日本でもこのような民間企業による、ロケット事業を行なっている企業があります。実業家の堀江貴文さんが出資する、インターステラテクノロジズ社は、民間単独のロケットとして国内で初めて高度100キロの宇宙空間に到達に成功しました。26このようなAI、フィンテック、ロボット、ロケットの四分野がこれからの新しいテクノロジーを用いたビジネスとして注目されています。

デジタルモダンの経済論

アベノミクスからMMT

デジタル政策が推進されることによって経済はどのように変わっていくのでしょうか?日本では安倍政権時代に、アベノミクスによる三本の矢の一つである大胆な金融緩和政策が実行されました。それによって、それまで低迷していた株価が上昇し市場経済が正常な状態に戻った一方で、大きく膨れ上がったマネタリーベースは今後どうなるのかということなどが問題視されていました。しかし近年、アメリカの主流派経済学者の中で話題となっているMMTという経済理論があります。MMTとはModern Monetary Theoryの略で、日本語では現代貨幣理論と訳されています。この現代貨幣理論は、ケインズ経済学もしくは、ポストケインズ派経済学の流れを汲むマクロ経済学理論の一つであると位置付けられています。27このMMTの基本的な考え方というのは、変動相場制で自国通貨を有している政府に限り、適正なインフレーションのためには無制限に財政支出しても良いという考え方になっています。これはつまり、これまで日本で行われてきたアベノミクスによる金融緩和政策で実行してきたことが正しかったことを示すような理論になっています。実際にアメリカでは引き続きゼロ金利政策を続けるとの発表があったり、日本においても金融緩和政策を継続すると発表されています。

リスクヘッジとしての暗号通貨

そのように、MMTを導入してくことになると経済自体がこれまでとは異なるフェーズに移行してくと予想されます。一方で、一部の投資家の中にはインフレーションリスクに対応する動きも見られるようになりました。ビットコインイーサリアムなど、一時期加熱してバブルとなり崩壊しましたが、この暗号通貨の市場がここ数年で盛り上がってきています。特にビットコインは、供給される通貨の総量が一定であることや、有形ではなく持ち運びが簡単であるという理由から、今後、金(ゴールド)と同じ価値を持つだろうと予想している投資家もいます。なので、金の代替資産としてビットコインに投資する人や、世界中で起きている金融緩和政策によるインフレーションリスクのリスクヘッジ資産としてビットコインイーサリアムなどの暗号通貨に投資をする人が増えてきています。ビットコインイーサリアムといった暗号通貨は、これから成長すると言われているフィンテックの分野に分類されるので、これから注目の市場となると考えられます。

デジタル通貨(アメリカと日本の事例)

一方で、既存の通貨のデジタル化の動きも始まっています。G20の財務大臣中央銀行総裁会議は2020年10月13日、IMF国際通貨基金)と世界銀行国際決済銀行と協力して、銀行システムにおける中央銀行デジタル通貨のルールを策定すると発表しました。28この既存通貨のデジタル化で採用されるのがステーブルコインによるデジタル通貨です。このステーブルコインというのは、法定通貨との交換レートを一定に保つ暗号資産(仮想通貨)を作るというものになります。これによって安定した価格変動が保たれるという仕組みになっています。このステーブルコインは、大きく、法定通貨担保型、暗号資産担保型、無担保型の三つに分類されます。おそらく日本やアメリカで現在導入の検討がされているデジタル通貨というのは、法定通貨担保型のステーブルコインとなると考えられます。

デジタル出版

最後にデジタル化が進む中での経済の変化として注目したいのがデジタル出版です。現在、Amazonで書籍を購入しようとすると単行本かKindle版(電子書籍)の二つを選ぶことができますが、このうちKindle版というのがいわゆるデジタル出版に当たるものになります。もう少し厳密に言うと、AmazonではKindleダイレクト・パブリッシュを行うと、無料でセルフ出版を行うことができます。これによって個人ベースでも気軽に電子書籍をアマゾンから売ることができます。29デジタル化政策のもっとも重要なミッションの一つがペーパーレス社会の実現なので、このAmazonのような誰もが気軽に電子書籍を出版できるような環境が整っているということは経済にとっても重要なことだと考えられます。このデジタル出版というのは、このようなAmazon電子書籍の出版だけを指すというよりは、ホームページやブログ運営、アンドロイドやiOSでのアプリのリリースなども含めた総合的なものとして捉えることで、これまでのアナログからデジタルへの移行の可能性を広げると思います。

デジタルモダンの社会論

ソーシャル・セキュリティー・ナンバー(アメリカ)

緩やかなインフレーションになるまで無制限に金融緩和政策をするというMMTの議論や、ビットコインイーサリアムなどの暗号通貨市場の盛り上がり、既存通貨のデジタル貨幣化への以降などのように新しい経済が動き出してくなかで、社会はどのように変わっていくのでしょうか?アメリカでは、古くより、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーという社会保障番号が導入されています。これは、アメリカ合衆国連邦政府社会保障局(Social Security Administration)により、1936年11月、社会保障局によってニューディール政策社会保障プログラムの一環として発行されたのが最初で、市民・永住者・外国人就労者に対して発行される9桁の番号からなるものです。もともとは徴税用の個人特定が目的でしたが、近年では、個々の住人を認識するためのID、国民総背番号制の意味合いが大きくなっています。今年におきたコロナ禍による都市のロックダウンになった時には、アメリカでは新型コロナ感染の影響による現金給付の政策を決定し、その後、迅速に給付金が振り込まれました。納税申告をした人は、特に手続きをしなくても自動的に給付金が振り込まれるようになっており、こうした緊急時における国民への現金給付のシステムがこのソーシャル・セキュリティー・ナンバーがあることによって確立しています 。

マイナンバー制度(日本)

一方の日本においては、マイナンバー制度というものが現在、政府によって推進されています。マイナンバー制度は、2016年から、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づき、発行されている個人番号です。このマイナンバーが記載されたマイナンバーカードは、本人確認のための身分証明書として利用できるほか、自治体サービス、e-Tax等の電子証明書を利用した電子申請等、様々なサービスにも利用できます。アメリカのソーシャル・セキュリティー・ナンバーと、この日本のマイナンバー制度にはどのような違いがあるのでしょうか?アメリカのソーシャル・セキュリティー・ナンバーは、もともと想定していた社会保障分野での個人特定だけでなく、民間企業の銀行やクレジットカード作成などにも使用されています。そのため、アメリカのソーシャル・セキュリティー・ナンバーは民間企業サービスなど幅広い分野で使用されることなどにより、なりすましや漏洩などが大きな問題になっているという現状があります。一方の日本のマイナンバー制度は、民間企業による使用は禁止されており、社会保障と税金、災害時の対策のためにのみ使用が認められています。これは、日本のマイナンバー制度は行政機関のみに利用範囲を限定する事で、アメリカのようななりすまし問題を防止しようとしているのだと考えられます。このマイナンバー制度の普及率を向上させることが今後のデジタル推進の重要な鍵となると考えられます。

ベーシック・インカム

今年の4月に日本で緊急事態宣言が発令された頃、イタリアの次に新型コロナの感染者数が多いスペインで、4月5日、ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入が決定されました。一方で、イギリスでもベーシック・インカムの導入が検討されました。また、イタリアでは、2018年11月にベーシック・インカムや反EUなどを公約にあげた五つ星運動が第1党になったことでベーシック・インカムの検討が始まっています。そもそもベーシック・インカムとは、最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策です。アメリカなどでは、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)といったりしています。つまり、ベーシック・インカムとは、国が国民に対して必要最低限の所得を保障するという政策となっています。日本においても、今年に入ってからベーシック・インカムの議論が盛んに行われるようになりました。海外の研究ではベーシック・インカム職業訓練とセットで行わないと成果が出ないという報告もあり、MMTの現代貨幣論と同じように、これから導入に向けた議論が本格化すると考えられます。

アーキテクチャーからスティグマジー

ここでデジタルモダンの社会論を情報社会論の観点から少し考えてみます。情報社会論において近年、重要なトピックとなっているのがWeb2.0からWeb3.0への移行です。このWeb2.0からWeb3.0に移行していく中でどのようなものが設計可能となるのかという問いがデジタルモダンにおける社会論のリサーチクエスチョンとして重要になってくると考えられます。約10年前のWeb2.0のフェーズでは、アーキテクチャをいかに設計するかということが重要でした。一方のこれから起きるWeb3.0のフェーズではどのようなものを設計することが重要となるのでしょうか?情報社会論者の濱野智史さんは、アーキテクチャの次に設計可能なものとしてスティグマジーという概念を挙げています。

「その結論は、複雑な自己組織的秩序そのものをアーキテクトが人為的に設計することはできないというものだった。しかし、いま情報環境の出現によって、セミラティスや自生的秩序「そのもの」を一挙に設計することは不可能でも、正と負のフィードバックへの操作的介入と、「スティグマジー」を支えるログの集積・保存を通じて、自己組織的秩序の宿りやすい「環境」(=「生成力」の高いアーキテクチャ)であれば設計可能になりつつあるのではないか。これが筆者の暫定的な結論である。」30

つまりここで言っている、濱野さんの結論というのは、アレグザンダーや、ハイエクセミラティスと自制的秩序では、スティグマジーの設計は不可能であるけど、正と負のフィードバックへの操作的介入と「スティグマジー」を支えるログの集積・保存を通じて、自己組織的秩序の宿りやすい「環境」(=「生成力」の高いアーキテクチャ)であれば設計可能になりつつあるのではないかという暫定的な結論としています。つまり、これはケインズ有効需要の原理と同じ方法で、市場原理に基づいて、需要と供給が自動調整されるようにするのではなくて、政府による金融政策と財政政策による介入と、ビッグデータを分析すれば、スティグマジーの設計は可能ではないかということを言っているのだと思われます。このスティグマジーを設計するためには、金融政策と財政政策的なことを行い、ビッグデータ(もしくはデータ分析)が必要であると言っているとも解釈できます。さらに要約すると、PDCAをひたすら回して、改善することによって、集積・保存されたログの分析から、正と負のフィードバックへの操作的介入を行って、PDCAサイクルを回すというように解釈できると思われます。

デジタルモダンのライフスタイル

場所にとらわれない

デジタルモダンと呼べるような考え方が広まり、テクノロジーの進化によって、よりデジタル政策が推進され、経済や社会がこれまでとは異なるフェーズに移行してくなかで、人々のライフスタイルはどのように変わっていくのでしょうか?おそらくは、これまで以上にテレワーク化が進むと考えられます。テレワーク化が進むことによって、人々のライフスタイルは、より場所にとらわれないものへと考え方が進むと予想されます。例えば、テレワーク化がより進むことによって、オフィスへ通わなくても仕事ができるようになります。実際にツイッター社では恒久的にすべての業務をテレワークへと移行すると発表しています。31その他のGoogleAmazonといったGAFAと呼ばれるアメリカ大手IT企業についてもテレワークでの業務を延長すると発表しています。こうしたことからも、ワークスタイルのテレワーク化によって、これまで以上に場所にとらわれないで仕事を行う人が増えてくると予想されます。

地方への移住が進む

テレワーク化が進むことによるワークスタイルの変化によって、場所にとらわれずに仕事をする人が増えてくるとどのようなことが起きるのでしょうか?2020年9月のニュースで、政府が2021年度から、テレワークで東京の仕事を続けつつ地方に移住した人に最大100万円を交付するという記事がありました。32この記事によると、今後、地方でIT(情報技術)関連の事業を立ち上げた場合は最大300万円とするという、地方移住を行うIT事業者を支援するとあります。このようにテレワークで仕事を行い地方に移住して活動するIT事業者を支援するような政策も打ち出されていることを考えると、これからは地方へ移住するIT事業者が増えるのではないかと考えられます。特にフリーランスで活動しているIT事業者の多くはノマドワーカーと呼ばれるような、場所にとらわれないで行うワークスタイルを好んでいる人も多く、そういうノマドワーカーから見ても、地方移住の選択肢は魅力的なものとなると考えられます。

東京の一極集中が終わる

テレワーク化により、場所を選ばないで働く人が増え、さらに政府のIT事業者の地方移住支援の政策がより推進されていくと、今後はこれまでのような東京への一極集中の流れが終わる可能性があります。これまでは、国の中心的なニューヨーク、ロンドン、パリ、東京などの都市に、ヒト・モノ・カネが一極集中して大都市を形成してきましたが、このテレワーク化が進むことによって、この大都市への一極集中の流れが終わる可能性があります。これまではグローバリゼーションによって、各国の都市はグローバル競争にさらされながら大規模開発を中心に都市間競争を行ってきました。しかし、コロナ禍による都市のロックダウンやテレワーク化の推進によってワークスタイルそのものに変化が起きたことによって、その国際的な都市間競争に終わりが見えてきているようにも思われます。建築家の隈研吾さんは、これからの都市や街づくりは、コンパクトシティ化によって大都市をもっと細分化して、ヒューマンスケールの街づくりを展開すべきだと主張されています。33筆者も隈研吾さんのいうようなヒューマンスケールの街づくりを展開するコンパクトシティを目指すような東京になることが良いのではないかと考えています。

分散型都市へと変わる

テレワーク化が進み、IT事業者の地方移住がより増えて、東京はコンパクトシティ化によって、幾つかのエリアに細分化されて、これまでのような中心都市への一極集中が終わると都市はどのように変わっていくのでしょうか?おそらくこれからは、一極集中型都市から分散型都市へと変わっていくと考えられます。分散型都市というのは、厳密には東京などの都心部への集中的な投資による都市開発が終わり、これまであまり目立たなかった第二、第三番目に位置していたような割と小さめの都市への資本投下が進むのではないかと筆者は予想しています。例えば、日本であれば、東京を中心に横浜、大阪、名古屋、福岡、札幌と言ったところにこれまで、多くのヒト・モノ・カネが集まってきていましたが、今後はこれに、東京の周辺の都市である、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨あたりの都市部の開発や、大阪周辺であれば、岐阜、三重などの都市部と言ったような、二番手、三番手に位置してきた都市部への開発が積極的に行われていくのではないかと予想しています。このような流れの変化が分散化都市として今後、より顕在化してくると考えられます。

まとめと結論とその次の未来

なぜポストモダンは終わりを迎えたのか?【まとめ】

  • 隠喩やメタファーよりも実装やアルゴリズムが求められるようになった。
  • ポエムやニュアンスを伝えるよりもロジックや手順を示すことが求められるようになった。
  • 漠然とした全体性を指し示すよりもセグメントを絞り込みターゲットを定めることが求められるようになった。
  • 物質的なアクチュアルな世界よりも非物質的なサイバネティクスな世界の理解が必要とされるようになった。
  • 自然環境の中からアイデアや方法論を見つけることよりも、人工環境の延長からアイデアや方法論を見つけ出すことが求められるようになった。
  • 中間に人間が介入しないような公平・公正なコンセンサスシステムによる民主主義の実現が求められるようになった

結論

ブロックチェーンの改ざん不可能性や人間を介入させないコンセンサスシステムの社会実装がデジタルモダンの目指している思想・哲学であると仮説を立てることができます。この10年で、このようなデジタルモダンと言えるような志向をしてく社会に変化するのではないかと考えられます。

デジタルモダンの先にあるもの【デジタルモダンからサイバネティクスモダンへ】

最後に、デジタルモダンの先にある思想について少し考えてみます。公文俊平先生の『情報社会学序説』という2004年に出版された書籍によると、日本の西欧型近代化を以下のように整理しています。34この書籍によれば、情報化は1975年から2065年にかけて進むとあります。そして、この表では、それぞれの期は、30年かさなっているように書かれています。

第一期 第二期 第三期
1855-1945 1915-2005 1975-2065
国内目標 文明開化 民主主義 地方化
国際目標 列強化 平和主義 地球化
発展戦略 富国強兵 経済発展 情報化

もし第四期のフェーズが始まるとすると、2035年から始まり、2065年の30年で移行すると言えます。”人工知能の性能が全人類の知性の総和を越える時点”である「シンギュラリティ」が起きるのが2045年と言われていますので、公文先生の話はこのシンギュラリティの話とも近いのだと考えられます。情報化の次が何かはここには書かれていないのですが、2035年には何かしらの次のフェーズは始まって、それはこの表の計算通りだとすると2125年まで続くということになります。筆者としては、この第四期の考え方として、サイバネティクス研究によって脳が神経細胞の電子ネットワークであることが明らかになり、その後、ウォルター・ピッツとウォーレン・マカロックによる人工神経細胞のネットワークを解析したことによって、最初のニューラルネットワーク研究となるものにつながったサイバネティクスという概念35を使った、サイバネティクスモダンと言えるような思想となるのではないかと考えています。

注釈


  1. 浅田彰著 『構造と力―記号論を超えて』 勁草書房 1983年9月10日

  2. ソーカル事件

  3. アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン著(田崎 晴明 訳)『「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用』 岩波書店 2000年5月24日

  4. 山形浩生著『CUT ポストモダンに病んで/夢は枯れ野をかけめぐる。

  5. デコンストラクションの建築家たち

  6. 浅田彰著 『逃走論―スキゾ・キッズの冒険』 筑摩書房 1986年12月1日

  7. ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング 、アンナ・ロスリング・ロンランド 著(上杉 周作、関 美和訳) 『ファクトフルネス』 日経BP 2019年1月11日

  8. オートポイエーシス

  9. ソーカル事件

  10. デジタル庁創設へ基本方針 年内に、首相指示

  11. 東京都、デジタル化を推進 改革チームが始動

  12. デジタルトランフォーメーション

  13. 経済産業省の発表しているDXの資料

  14. ムーンショット型研究開発制度の概要

  15. ディープラーニング

  16. ニューラルネットワーク

  17. ブロックチェーン

  18. ラズベリーパイ販売サイト

  19. Jetson nano販売サイト

  20. AWSのサイト

  21. GCPのサイト

  22. イスラエルテック22社まとめ、「スタートアップ国家」が誇るAI、IoTの最新技術

  23. DeFiバブルと価値のインターネットの本質

  24. ボストンダイナミク社のサイト

  25. スペースXの衛星ネットワーク「スターリンク」は、世界の情報格差を解消できるか?

  26. ホリエモンロケット、打ち上げ成功 民間単独で国内初

  27. 現代貨幣理論

  28. IMF、世銀、G20が中銀デジタル通貨のルール策定へ

  29. Kindleダイレクトパブリッシュ

  30. 自己組織化は設計可能か──スティグマジーの可能性

  31. 恒久的に在宅勤務認める方針 コロナ流行終息後も ツイッター社

  32. テレワークで地方移住、最大100万円補助 政府21年度から

  33. 隈 研吾さんの言葉② “東京をコンパクトシティへの先進事例に”

  34. 公文俊平著『情報社会学序説―ラストモダンの時代を生きる』 NTT出版 2004年10月1日

  35. サイバネティクス

Pythonを使った加重平均資本コスト(WACC)の求め方

ファンダメンタル分析を含む、コーポレート・ファイナンスの理論の一つに、税引後加重平均資本コスト(WACC)というものがあります。WACCの特徴は、その現在価値の計算結果自体が、節税効果を含んだ事業価値になることです。この記事では、Pythonを使ったWACCの求め方について紹介しています。

期待収益率と加重平均資本コスト(WACC)の関係

株主資本コスト


r_{E,L} = r_{E,U} + \frac{D}{E} \times (1 - t_C) \times (r_{E,U} - r_D)

加重平均資本コストは以下のような式になります


WACC = r_D \times (1 - t_c) \times \frac{D}{D + E} + r_{E,L} \times \frac{E}{D + E}

WACCの計算

例えば、ある企業の負債発行前の期待収益率が6%、事業用資産を100とした時に、負債の節税効果をが20の場合、有利子負債が50で、株主資本が70、法人税率が40%、有利子負債の金利が2%との時、期待収益率は以下のようになります。


r_{E,L} =6\% + \frac{50}{70} \times (1 -40\%) \times (6\% - 2\%) = 7.71\%

さらにそこから、WACCを計算すると以下のようになります。


WACC = 2\% \times (1 - 40\%) \times \frac{50}{50 + 70} + 7.71\% \times \frac{70}{50 + 70} = 5.0\%

Pythonでは以下のように書くことができます。

D = 50 #社債
E = 70 #株主資本
tC = 0.4
rEU = 0.06 #株主資本コスト(期待収益率)
rD = 0.02 #社債の資本コスト

rEL = rEU + D/E*(1 - tC)*(rEU - rD)
print(round(rEL*100,2), "%")

WACC = rD*(1 - tC)*D/(D + E) + rEL* E/(D + E)
print(round(WACC,4)*100, "%")

7.71 %
5.0 %

WACCの計算その2

負債の資本コストが3%に上昇した場合。

株主資本コストについては、以下の計算式、


r_{E,L} = r_{E,U} + \frac{D}{E} \times (1 - t_C) \times (r_{E,U} - r_D)

から計算し、その後、求めた株主資本コストを使って、税引後加重平均資本コスト(税引後WACC)を計算します。


r_{E,L} = 6\% + \frac{50}{70} \times (1 - 40\%) \times (6\% - 3\%) = 7.29\%

WACC = 3\% \times (1 - 40\%) \times \frac{50}{120} + 7.29\% \times \frac{70}{120} = 5.0\%
D = 50 #社債
E = 70 #株主資本
tC = 0.4
rEU = 0.06 #株主資本コスト(期待収益率)
rD = 0.03 #社債の資本コスト

rEL = rEU + D/E*(1 - tC)*(rEU - rD)
print(round(rEL*100,2), "%")

WACC = rD*(1 - tC)*D/(D + E) + rEL* E/(D + E)
print(round(WACC,4)*100, "%")

7.29 %
5.0 %

WACCの計算その3

法人税率が30%に引き下げられた場合(株主資本コストが7%に上昇)。


E_{E,L} = 7\% + \frac{50}{70} \times (1 - 30\%) \times (7\% - 2\%) = 9.50\%

WACC = 2\% \times (1 - 30\%) \times \frac{50}{120} + 9.50\% \times \frac{70}{120} = 6.125\%
D = 50 #社債
E = 70 #株主資本
tC = 0.3
rEU = 0.07 #株主資本コスト(期待収益率)
rD = 0.02 #社債の資本コスト

rEL = rEU + D/E*(1 - tC)*(rEU - rD)
print(round(rEL*100,2), "%")

WACC = rD*(1 - tC)*D/(D + E) + rEL* E/(D + E)
print(round(WACC,5)*100, "%")

9.5 %
6.125 %

WACCの計算その4

先の二つの条件が同時に起こった場合(株主資本コストが7%に上昇)


r_{E,L} = 7\% + \frac{50}{70} \times (1 - 30\%) \times (7\% - 3\%) = 9.00\%

WACC = 3\% \times (1 - 30\%) \times \frac{50}{120} + 9.00\% \times \frac{70}{120} = 6.125\%
D = 50 #社債
E = 70 #株主資本
tC = 0.3
rEU = 0.07 #株主資本コスト(期待収益率)
rD = 0.03 #社債の資本コスト

rEL = rEU + D/E*(1 - tC)*(rEU - rD)
print(round(rEL*100,2), "%")

WACC = rD*(1 - tC)*D/(D + E) + rEL* E/(D + E)
print(round(WACC,5)*100, "%")

9.0 %
6.125 %

Pythonを使った総資産価値の求め方

企業価値を考える場合には、完全資本市場という条件下で考える場合があります。この場合には、MMの第1命題やMMの第2命題が成立します。一方で、現実では、様々な要件があります。この記事では、法人税の課税所得の計算において、支払利息が経費として控除されることによる影響を考えた総資産価値に関して紹介しています。

総資産価値の関係式

借入れのない企業の総資産価値と借入れのある企業の総資産価値の関係は以下のような式で表されます。

借入れのある企業の総資産価値:


A^*_L

借入れのない企業の総資産価値:


A^*_U

現在の負債残高:


D

法人税率:


t_C

支払金利の節税効果の現在価値の総和:


D \times t_c

A^*_L = A^*_U + D \times t_C

例えば、法人税の存在する世界において、総資産の時価が100億円の企業A社があり、現状株主資本だけで資本調達している。現在の法人税率は30%であった場合、この企業が1年間に生み出すキャッシュフローは、将来にわたって一定であるとします。この企業が今、50億円、金利2%の永久社債(満期がない負債)で資金調達して、自社株買いし、買い入れた株式を償却したとした場合、仮に、社債金利は全額法人所得計算上の費用として控除できるだけの利益があり、自社株買いは株価へのプレミアムを付与せずに実施できるとすると、50億円の永久債から発生する節税効果の現在価値は、15億円(= 現在の負債残高 × 法人税率 =円×30%)になります。なので、節税効果を加味した企業の価値は、115億円(= 借入れのない企業の総資産価値 + 現在の負債残高 × 法人税率 = 100億円 + 15億円)となります。さらに、(負債)社債:株主資本で、負債の残高が50億円なので、この企業の社債発行後の市場価値ベースでの資本構成比は、株主資本の残高は、65億円(=115億円ー50億円)、資本構成比は、負債:株主資本=50:65=10:13となります。

例えば、A社が、上記と同じように永久社債を発行して、自社株買いと株式償却を行うとして、企業の社債発行後の市場価値ベースでの資本構成比を、社債(負債):株主資本で50:50としたい場合、発行する永久社債の金額は以下のようになります。

発行すべき永久社債の金額をx億円とすると、以下のような方程式を解くことで、永久社債の残高が求められます。


A_L \times 50% = (A_U + x \times T_C) \times 50%=(100億円 + x \times 30%)×50%=x

したがって、

x=58.82億円

Pythonではsympyを使って以下のように書くことができます。

import sympy

x = sympy.Symbol('x')

sympy.solve(0.5*(100 +x*0.3) - x)

[58.8235294117647]

負債を活用したことによる財務的困難のコスト

先ほどのような負債を活用したことによる財務的困難のコストとしては以下のようなことがあります。

  • 倒産コスト
  • 倒産が視野に入ることによる経営の変質のコスト

例えば、財務的困難のコストが、比較的わずかな負債比率でも発生しやすいようなビジネス、また、比較的高い負債比率まで発生しにくいようなビジネスについて、それぞれの性質を考察して、実例をあげると、比較的わずかな負債比率でも財務的困難のコストが発生しやすいビジネスには、キャッシュフローの変動が大きいビジネス、例えばITやバイオベンチャーの企業や映画産業の企業などがあります。また、比較的高い負債比率まで発生しにくいビジネスには、キャッシュフローが安定的に稼ぎ出せて、その変動が小さいビジネス、たとえば、携帯電話事業(毎月小口だが多数の顧客から安定的に収入が得られる)や、一等地にある不動産の賃貸企業(家賃収入が安定している)などがあります。これらの事業では、仮に少々の解約や他者への顧客流入があったとしても、事業から獲得するキャッシュフローは安定しています。

Pythonを使ったMM命題による期待収益率と市場リスク(ベータ)の求め方

ファンダメンタル分析を含む、コーポレート・ファイナンスの中心的な理論として、MM命題というのがあります。これは、税金や取引に関わる諸経費が存在しない「完全市場」においては、資本構成(負債と株主資本の組み合わせ)は企業価値に影響を与えないとする第一命題と、投資政策に変更がなければ、企業の市場価値は配当政策によって影響を受けないとする第二命題からなる理論です。この記事では、Pythonを使ったMM命題による期待収益率と市場リスク(ベータ)の求め方について紹介しています。

MMの第1命題

完全資本市場において、企業の資本構成は、企業全体の勝ちに影響を与えない。

MMの第2命題

完全資本市場において、借入れのある企業(レバレッジのある企業)の株主資本の期待収益率と、この企業と同じキャッシュフローを生み、借入れのない(レバレッジのない=アンレバーな)企業の株主資本の期待収益率の間には、負債の時価総額、負債の期待収益率、株主資本の時価総額は、以下のような関係が成り立つ。

借入れのある企業(レバレッジのある企業)の株主資本の期待収益率


r_{E,L}

借入れのない(レバレッジのない=アンレバーな)企業の株主資本の期待収益率


r_{E,U}

負債の時価総額


D

負債の期待収益率


r_D

株主資本の時価総額


E

r_{E,L} = r_{E,U} + \frac{D}{E}(r_{E,U} - r_D)

また、CAPMによって資本コストを求める際に必要な、企業の資産や株主資本の市場リスク指標であるベータについても、オリジナルのMMの第2命題と同様の関係が成り立つ。


\beta_{E,L} = \beta_{E,U} + \frac{D}{E}(\beta_{E,U} - \beta_D) = \beta_{A} + \frac{D}{E}(\beta_{A} - \beta_D)

MMの第1命題の例

例えば、MM命題の完全資本市場の前提が成立している世界に、総資産の時価が100億円、期待収益率が年率6%の企業A社があって、現状株主資本だけで資金調達しています。この企業が、資本構成を(負債)社債50%、株主資本50%に変更したいと思っている場合、社債で50億円を調達し、同時にその資金で50億円分自社株買いを行って、株式を消却すると、社債が50億円、株主資本が50億円という資本構成に変更されます。

資本構成変更取引完了前には、総資産の収益はすべて株主資本の提供者に還元されるものだったので、株主資本コスト(期待収益率)は、総資産の収益率と同じく年率6%になります。


r_{E,U} = r_A = 6

また、資本構成変更完了後の株主資本コスト(期待収益率)は、MMの第2命題によって、10%と求められます。


r_{E,L} = r_{E,U} + \frac{D}{E}(r_{E,U} - r_D)
 
r_{E,L} = 0.06 + \frac{50}{50}(0.06 - 0.02) = 0.1

Pythonでは以下のように書くことができます。

D = 50 #社債
E = 50 #株主資本

rA = 0.06 #総資産の収益率
rEU = 0.06 #株主資本コスト(期待収益率)
rD = 0.02 #社債の資本コスト

rEL = rEU + D/E*(rEU - rD)
print(round(rEL,2))

0.1

MMの第2命題の例その1(ベータの場合)

先ほどのA社の総資産リスク(CAPMのベータ)は1であり、A社の社債のリスク(ベータ)が0.2である場合に、資本構成変更取引の完了前、完了後の株主資本のリスク(ベータ)は、それぞれ以下のように計算されます。

先ほどと同様に、資本構成変更完了前の株主資本のリスク(ベータ)は、総資産のリスクと同じ1となります。


\beta_{E,U} = \beta_A = 1

完了後の株主資本のリスク(ベータ)は、MMの第2命題と類似の計算式を用いて、1.8と求めることができます。


\beta_{E,L} = \beta_{E,U} + \frac{D}{E}(\beta_{E,U} - \beta_D) = 1 + \frac{50}{50}(1 - 0.2) = 1.8

Pythonでは以下のように書くことができます。

beta_EU = 1 #完了前の総資産リスク
beta_A = 1 #完了後の総資産リスク
beta_D = 0.2 #社債のリスク

beta_EL = beta_EU + D/E*(beta_EU - beta_D)
print(round(beta_EL,2))

1.8

MMの第2命題の例その2

先ほどと同じような手順で、A社の資金調達が、75億円の社債(資本コスト3%、ベータ0.4)と、25億円の株主資本で行われることとなった場合、資本構成変更取引の完了後の株主資本の資本コストとリスク(リスク)は以下のように求めることができます。


r_{E,L} = 0.06 + \frac{75}{25}(0.06 - 0.03) = 0.15

\beta = 1 + \frac{75}{25}(1 - 0.4) = 2.8

Pythonでは以下のように書くことができます。

D = 75 #社債
E = 25 #株主資本

rA = 0.06 #総資産の収益率
rEU = 0.06 #株主資本コスト(期待収益率)
rD = 0.03 #社債の資本コスト

rEL = rEU + D/E*(rEU - rD)
print(round(rEL,2))

0.15

beta_EU = 1 #完了前の総資産リスク
beta_A = 1 #完了後の総資産リスク
beta_D = 0.4 #社債のリスク

beta_EL = beta_EU + D/E*(beta_EU - beta_D)
print(round(beta_EL,2))

2.8